働き方・キャリア

技術者がAI時代に削るべき仕事と伸ばすべき仕事

AIの普及によって、技術者の仕事の在り方は大きく変わってきました。
「どこまでAIが仕事を奪うのか」「自分はこのままで評価されるのか」
そんな不安を抱えている人も多いはずです。

私自身、製造業の開発・技術職として10年以上現場に関わってきましたが、
AIを上手に使う技術者ほど“評価されるポイント”を正しく理解しています。

それは、AIに置き換えられる仕事を思い切って削り、
自分にしかできない仕事に時間を投資していることです。

この記事では、現場の実例を交えながら、
AI時代に「削る仕事」と「伸ばす仕事」の判断基準を丁寧に解説します。

日々の試験計画や報告書作成を効率化したい方は、以下の記事も参考になります。

ChatGPTで試験計画が速くなる──現場で使えるテンプレとプロンプト集
ChatGPTで不具合解析が速くなる──原因の切り分けプロンプト集


AI時代に削るべき仕事とは何か

AI時代に削るべき仕事の基準は非常にシンプルです。

・再現性が高い
・成果への影響度が低い

技術者の現場には、この条件に当てはまる作業が想像以上に多く存在します。

以下の記事も参考になります。

技術職がChatGPTを継続できない3つの理由と、明日から使い続けられる実践ステップ

技術者が削るべき代表的な仕事

・報告書の形式調整や文章の体裁の統一
・議事録の下書きや清書
・試験データの整理や単純な転記
・仕様書間の差分チェック
・定型メールの作成や軽微な文章生成
・資料の体裁を整える作業
・既存資料のコピペ編集
・フォーマット作成と微調整

これらは、やっても評価に直結しない“やらされ仕事”です。
丁寧に仕上げたとしても、上司から見えるのは
「作業は頑張っているが、判断力は見えない」
という評価に留まってしまいます。

AIに任せることで得られる効果

ChatGPTやCopilotを使えば、こうした作業は大部分が自動化できます。

例えば次のような仕事は、ほぼ置き換え可能です。

・議事録の初稿作成
・試験データの要点整理
・報告書の文章の整形
・資料のレイアウト統一
・メールの文章案作成
・顧客資料の補足文の生成

ここで戻ってくる時間は、小さな積み重ねではありません。
週に3〜5時間以上戻る人も珍しくありません。

削る仕事を減らすほど、あなたの意思決定に時間を使えるようになります。


逆に伸ばすべき仕事とは何か

AIによって自動化が進むほど、価値が残る領域は明確になります。
それが、技術者としての“判断と解釈”が求められる仕事です。

以下の記事も参考になります。

試験計画 × ChatGPT──技術者が明日から使えるテンプレ公開
技術者こそChatGPTを使うべき理由──現場で使える3つの実例つき

AI時代に価値が上がる仕事

・試験計画の方向性を決める判断
・不具合原因を絞るための仮説構築
・リスク評価と品質保証
・顧客仕様の意図を読み解く作業
・条件が複雑な案件の優先順位づけ
・チームや関係者との調整と説明
・新規検討のための構造整理
・安全性が絡む判断業務

AIは情報整理や文章生成は得意ですが、
「何を優先すべきか」
「どこが本質的な問題か」
といった判断の部分は、経験を持つ技術者でなければ難しい領域です。

伸ばすべき領域に時間を投資するメリット

・評価基準に直結する
・替えが効かない立ち位置になれる
・仕事の“意味”が理解できる
・昇格や責任ある役割に自然に近づく
・キャリアの選択肢が広がる

特に、技術職は
「何を考えたか」「どう判断したか」
が評価につながる職種です。

だからこそ、伸ばすべき領域に時間を使うと、大きな差になります。


成長する技術者は仕事を細かく分解している

削る仕事と伸ばす仕事の見極めが難しい理由は、
多くの人が仕事を“ざっくり”把握しているからです。

優秀な技術者ほど、仕事を細かく分解し、
AIに任せる部分と自分がやる部分を自然に切り分けています。

以下の記事も参考になります。

【技術者がAIで迷走しないための思考法】本質的に使いこなすコツ
技術職のためのChatGPTプロンプト20選|報告書・試験計画・議事録が最短で終わる実践AI

例:試験計画作成を分解すると違いが見える

「試験計画を作成する」というタスクをそのまま扱うと、
思考と作業が混ざってしまい、時間ばかりかかります。

これを分解すると、次のように整理できます。

・試験の目的の整理
・評価軸やOKラインの決定
・想定するリスクの棚卸し
・試験項目の草案づくり
・必要な測定項目の抽出
・文章の形に整える作業
・形式・体裁の調整
・補足資料や説明文の作成

この中で、AIに任せられるのは
「文章整形」「体裁調整」「補足文の生成」など。

逆に、目的整理や評価軸の設定、リスクの見立ては
技術者の判断力が必要な“伸ばすべき仕事”です。

分解するメリット

・判断すべき部分が明確になる
・作業部分はAIに切り出せる
・集中すべき作業に自然と時間を使える
・仕事の見通しが立つ
・属人化を防ぎやすくなる

仕事を分解する癖をつけるだけで、
業務の質とスピードは大きく変わります。


AIを使うときに気をつけたい点

AIを使う機会が増えるほど、
「任せてはいけない領域」を理解しておくことが重要です。

AIに任せると危険な領域

・安全性に関わる判断
・顧客仕様の細部解釈
・試験条件の最終的な妥当性判断
・重大不具合の原因確定
・社内機密情報を含む資料
・設計ロジックの重要部分

AIは“もっともらしい文章”をつくる能力に優れていますが、
その文章の正確さを保証してくれるわけではありません。

安全に使うためのチェック基準

・AIの生成物は「一次案」と考える
・重要な数字や条件は必ず自分で確認する
・曖昧な部分は自分の言葉で修正する
・機密情報は扱わない
・判断の根拠となる部分は必ず自分が考える

AIの活用とは、あくまで
「判断に集中するための時間を生み出す技術」
だと考えると、使いどころがはっきりします。


今日からできる仕事の配分リスト

削るべき業務
・形式調整
・体裁の整え
・テンプレへの転記
・文章の下書き
・データのまとめだけの作業
・フォーマットづくり
・図表のレイアウト調整
・補足説明の文章化

伸ばすべき業務
・判断業務
・品質保証
・安全性の確認
・異常の見立て
・顧客の意図の整理
・試験目的や評価軸の設計
・不具合原因の仮説構築
・合意形成や説明
・現場状況の読み取りと優先順位づけ

実践のコツ

まずは
「1日の仕事のうち1つだけ、AIに任せられる部分を切り出す」
これだけで十分です。

1週間続けると、
・時間に余裕が生まれる
・判断に時間を回せる
・精神的に楽になる
という変化がはっきり現れます。


まとめ

AIの普及によって、技術者の仕事は
「削る仕事」と「伸ばす仕事」に分離しました。

削るべき仕事を減らし、
判断と解釈という“価値が残る仕事”に集中することで、
評価は大きく変わります。

自分の働き方を見直したいと感じている方は、
今日紹介した仕分けリストから始めてみてください。
明日の時間の使い方が、静かに変わり始めるはずです。

この記事の内容を実務に落としたい方へ
試験計画、報告書、議事録などを効率化したい方には、Note
「技術職のためのChatGPT実務テンプレ50選」
が役立つはずです。

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