不具合解析では、原因を早く知りたくなる一方で、最初にどこを見ればよいか分からず、候補だけが広がってしまうことがあります。
そのとき、初動で特に重要なのが「変化点」を洗い出すことです。
現象が出る前後で何が変わったのか。
良品と不良で何が違うのか。
ここが整理できていないまま原因候補を並べ始めると、確認項目ばかり増えて前に進みにくくなります。
この記事では、不具合解析で変化点をどう洗い出せばよいかを、技術職向けに分かりやすく整理します。
毎回ゼロから悩まなくて済むように、見るべき観点と使いやすい型を、実務で使いやすい形でまとめます。
なぜ不具合解析で変化点が重要なのか
不具合解析では、原因をいきなり当てにいくより、まず原因領域を狭めていく方が実務では進めやすいです。
そのときに中心になるのが、発生前後や良品・不良の間にある変化点です。
変化点がないところに原因は置きにくい
不具合がある時点から出始めたなら、その前後で何かが変わっている可能性があります。
また、良品と不良で差があるなら、その差の中に原因候補が潜んでいる可能性があります。
逆に言えば、何も変わっていないところを優先的に疑っても、初動としては遠回りになりやすいです。
変化点を見ないと候補が広がりすぎる
変化点を整理せずに原因候補を出すと、次のような状態になりやすいです。
- 材料も怪しい
- 工程も怪しい
- 設備も怪しい
- 作業も怪しい
- 環境も怪しい
この状態だと、全部見たくなってしまい、確認項目だけが増えてしまいます。
だからこそ、不具合解析の初動では、まず変化点の洗い出しが重要です。
変化点は「発生前後」と「良品・不良」で見る
変化点を洗い出すときは、思いつきだけで出すより、比較軸を決めた方が整理しやすくなります。
基本は、次の2方向で見るのが分かりやすいです。
1. 発生前後で見る
不具合が「ある時点から出始めた」なら、その前後で変わったことを見ます。
たとえば、次のようなものです。
- 材料ロット
- 工程条件
- 設備設定
- 治具
- 作業者
- 検査方法
- 使用条件
2. 良品・不良で見る
不具合品と良品を比較できるなら、その差を見ます。
このとき、主観ではなく、できるだけ事実ベースで比べることが大事です。
たとえば、
- ロットが違う
- 設定値が違う
- 作業順が違う
- 使用条件が違う
- 測定値に差がある
などです。
この2方向で見るだけでも、変化点の洗い出しはかなり進めやすくなります。
まず見るべき変化点の観点
変化点を洗い出すときは、観点を固定しておくと抜け漏れを減らせます。
ここでは、技術職の実務で使いやすい基本観点を整理します。
材料
材料そのものに変化がないかを見る観点です。
- ロット違い
- 材質違い
- 仕入先違い
- 表面状態の違い
- 保管条件違い
工程
工程条件や手順に変化がないかを見る観点です。
- 条件設定変更
- 加工順変更
- 工程追加・削除
- 時間変更
- 温度変更
設備
設備や治具に変化がないかを見る観点です。
- 設備更新
- 設定変更
- 校正状態
- 治具交換
- 消耗状態
作業
人の作業や運用に変化がないかを見る観点です。
- 作業者変更
- 作業手順変更
- 教育状況
- 作業時間帯
- 作業ばらつき
検査・測定
不具合そのものではなく、見え方が変わっている可能性もあります。
そのため、測定や検査条件も見ておく必要があります。
- 測定器変更
- 測定条件変更
- 判定基準変更
- 検査タイミング変更
使用環境
製品や部品の使われ方に変化がないかを見る観点です。
- 温度
- 湿度
- 負荷条件
- 使用時間
- 取り付け条件
すぐ使える変化点整理の型
毎回ゼロから洗い出すと重いので、まずはそのまま使える型を持っておくのがおすすめです。
ここでは、最も使いやすい基本形を紹介します。
型1:発生前後比較
不具合発生前と発生後で変わったことを、
材料・工程・設備・作業・検査・環境の観点で整理する型です。
型2:良品・不良比較
良品と不良品を比較し、差がある項目を、
材料・工程・設備・作業・検査・環境の観点で整理する型です。
そのまま使える整理テンプレート
【変化点整理】
1. 発生前後で変わったこと
・材料:
・工程:
・設備:
・作業:
・検査:
・使用環境:2. 良品と不良で差があること
・材料:
・工程:
・設備:
・作業:
・検査:
・使用環境:
たとえば、次のように使えます。
【変化点整理】
1. 発生前後で変わったこと
・材料:材料ロット変更あり
・工程:加熱条件変更あり
・設備:同一
・作業:夜勤帯で発生が多い
・検査:測定器は同一
・使用環境:高温条件でのみ発生2. 良品と不良で差があること
・材料:一部ロット差あり
・工程:処理時間に差あり
・設備:差なし
・作業:差なし
・検査:差なし
・使用環境:長時間使用時のみ差あり
この形で並べるだけでも、かなり見やすくなります。
よくある失敗と直し方
変化点を洗い出そうとしても、やり方を間違えると整理しにくくなります。
ここでは、よくある失敗を整理します。
失敗1:思いついた順に並べる
思いつきだけで並べると、抜け漏れが多くなります。
直し方
材料、工程、設備、作業、検査、環境のように、観点ごとに分けて整理します。
失敗2:差と原因を混同する
変化点が見つかったからといって、それがすぐ原因とは限りません。
直し方
まずは「差がある事実」として置き、原因候補としてはまだ断定しないようにします。
失敗3:変化点が多すぎて絞れない
洗い出したあとに優先順位がないと、結局全部見ることになります。
直し方
次の3つで優先順位をつけます。
- 発生条件との一致
- 再現性
- 影響の大きさ
この基準で並べるだけでも、確認順はかなり整理しやすくなります。
ChatGPTで変化点を整理する方法
変化点整理は、観点が多く、頭の中だけでやると漏れやすいです。
こういうときこそ、ChatGPTを整理役として使うとかなり楽になります。
向いている使い方
特に向いているのは、次の3つです。
- 変化点の観点出し
- 発生前後・良品不良の比較整理
- 抜け漏れ点検
そのまま使えるプロンプト例
以下の不具合情報について、変化点を整理してください。
観点は「材料」「工程」「設備」「作業」「検査」「使用環境」でお願いします。
発生前後、または良品・不良で比較できる形に、箇条書きでまとめてください。不具合情報:
・
抜け漏れ点検プロンプト
以下の変化点整理メモについて、抜け漏れがないか点検してください。
特に「材料」「工程」「設備」「作業」「検査」「使用環境」の観点で不足があれば指摘してください。変化点整理メモ:
・
この使い方なら、AIに原因を任せるのではなく、比較整理と漏れ確認に使えます。
変化点整理のあとに何を見るべきか
変化点を洗い出したら、それで終わりではありません。
次は、どれを先に確認すべきかを決める必要があります。
そのときの見方は、次の3つです。
- 発生条件と一致しているか
- 不具合の出方とつながっているか
- 早く確認できるか
ここまで整理できると、不具合解析は「候補を増やす作業」ではなく、「確認順を作る作業」に変わっていきます。
まとめ
不具合解析で変化点を洗い出す方法で大事なのは、思いつきで候補を増やすことではありません。
発生前後と良品・不良の比較で、差がある事実を整理し、原因候補を広げすぎないことです。
そのためには、
- 発生前後で見る
- 良品・不良で見る
- 材料、工程、設備、作業、検査、使用環境で整理する
この3つを押さえるだけでも、かなり進めやすくなります。
まずは毎回、同じ観点で変化点を洗い出すところから始めてみてください。
それだけでも、不具合解析の初動はかなり安定しやすくなります。
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